烏有に帰す

中古美術蒐集家&小料理研究家の雑事記

掘り出し物は無し

私のような小コレクターでも定期にカタログを郵送して貰える画廊が二軒ある。どちらも日本画の取り扱いでは五指に落ちない京都の老舗で、三月は双方から同時期にカタログを送って来るのが早春の楽しみの一つとなっている。

 

本年三月はどちらも触手が動くものは無かった。バジットオーバーと言うより端的に良いと思うものが無かったのである。昨年暮れは危うく散財するところだっただけに、残念なようなホッとしたような複雑な気分だ。これは何がしかのコレクターであれば誰でも分かってくれる心地だろう。

 

軸はある程度まとまった数まで収集してしまったので、今後は余程安くて良品という場合か、出色の出来というような作以外は自重しようと思う。飾らない絵を買うくらいなら日々の食卓に使える焼き物を買った方が良い。今後重点を置くべきは日本画の額で塗り込めのカラフルなものが良い。以前はこの手の日本画に全く興味が湧かず、余白の美至上主義者だったが額装となるとカラフルな岩絵の具の塗り込めが油彩ほどけばけばしくなく京壁の日本家屋によく合うという結論に至ったからである。昭和の近代日本画壇の作家たちもこぞって厚塗りの日本画に舵を切ったのにはそれなりに理由があると思う次第だ。