烏有に帰す

中古美術蒐集家&小料理研究家の雑事記

画集とヴィンテージワイン

先日某フリマサイトで画集とヴィンテージワインを同一出品者から買って到着を待っている。このサイトの楽しい所は対面のフリーマーケットさながら出品者と交渉して手早く売買が成り立つことだ。他のオークションサイトにはないスピード感と融通性がある。大方の出品が送料込み価格なのも良い。送料を購入者負担とすると出品者は配送事故を嫌って過剰梱包しがちである。嵩張って送料が増えても出品者の腹は痛まないからそうなるのであって、これを出品者負担とすればコストとリスクを正当に評価して概ね合理的な梱包となると思う。

 

最初は画集だけ興味を引かれたのだけど、値段交渉の末値引きは微少に止まり、ならば抱き合わせで他に何か買って送料分と少しお勉強してもらおうと古いワインを買うことにした。素人の出品者が常温保存していたカベルネの赤ワインなのだけど84年のヴィンテージで楽しみだ。

 

画集は畠中光享の展覧会の図録でこれも楽しみである。畠中光享は数少ない才能ある日本画の存命作家だと思う。彼の肖像画仏画は勿論風俗画も観たいと思わせる何かがあると思うからだ。

 

ある色紙絵に興味を惹かれて調べていくうちに畠中光享のことを知った。三彩の壺と薔薇一輪の静物画なのだけど、落款は「光」とある。その色紙絵が誰の作かはさて置き、畠中光享という画家を知る切っ掛けになったのは間違いないし、ヴィンテージワインとも御縁が出来た。このような連鎖のある買い物は良い買い物になることが多い。

 

何より画集とヴィンテージワインというパッケージを待っているこの時間がたまらなく良い。通販の配達を待つ時間を楽しめる買い物も他にそうそうないはずだ。例えるなら一晩早く出発して船室や列車の寝台の夜を楽しむ旅のようなものである。誰か素敵な人に贈り物をするならこの組み合わせにしてみたい。