烏有に帰す

中古美術蒐集家&小料理研究家の雑事記

「珍品堂主人」読了

井伏鱒二を読むのは「へんろう宿」以来であろうか。読むのが遅い私でも二日で読み切ってしまった。ストーリーのテンポが良くて明朗だからであろう。

 

珍品堂が魯山人ベースの創作かと思って読み進めていたのだが実際は秦秀雄という数寄者がモデルで、蘭々女が魯山人のようである。舞台の料亭は星岡茶寮で間違いないようだ。

 

秦秀雄という人物は中々の曲者だったようで追悼座談会への出席依頼は白洲正子以外皆断ったそうだ。しかし、古美術品の蒐集哲学に付いては我が意を得たる部分も多い。正本に興味が無く、堀り出しを生き甲斐とする所など同感の至りである。

 

井伏鱒二の文章はやや淡泊過ぎるけれど、登場人物が皆活き活きとしていて引き込まれる。地元の文豪だけにまた未読のもので気になっているものを図書館で借りようと思う。