烏有に帰す

中古美術蒐集家&小料理研究家の雑事記

色紙絵の勧め

昨年の暮れに毎年ノーベル文学賞候補に名前の挙がる小説家のラジオ番組で5%という話を聴いた。文学にせよ音楽にせよ深く鑑賞しようとする層は人口の凡そ5%程度なのだそうだ。

 

絵画についてはどうであろう。絵画鑑賞は小説や音楽ほど一般に馴染のあるものではないし、鑑賞する側により高度な鑑賞力が要求されると思う。美術館に年一度でも自腹を切って足を運ぶ層が5%程度なのではないだろうか。そして実際に身銭を切って絵を買う層は美術館の来館者の内5ー10%程度ではないかと思う。これが当たらずとも遠からずだとすると絵を買う人間は500人に1人、そしてその内反復継続して絵を収集する人間はその内10%、つまり5000人に1人くらいなのではないだろうか。 

 

このように、絵画収集をライフワークとする人口は極端に少ない。と思われる。その理由は幾つかあるが最大の障害はコストだろう。しかし、何も美術館級の名画や有名作家のものを画廊や百貨店で買うことだけが絵画収集ではない。日本画の色紙絵なら有名作家のものでも高くて数万、数千円で手に入る場合もある。気に入ったものの中から無理のない価格のものを少しづつ収集して、少し良い色紙用の額に季節に合わせて入れ替えていけば、立派な絵画収集と言えると思う。特に都市部の集合住宅に在住で、床の間が無かったり軸を掛けるスペースが無い人などでも色紙絵なら玄関の下駄箱の上や壁面で十分だ。そこに日本画の品良い小品が掛けてあったらどんなに素敵なことだろうと思う。

 

コロナ禍が関連しているのかどうか分からないけれど、最近色紙絵の良い物の投げが出なくなった。そして以前なら捨て置かれそうなものでも安いものはオークションで入札が入っている。一部そういう肩の力の抜けた絵画の楽しみ方に目覚めた層がいるのかもしれない。